- システム構築業界について知りたい
- システム構築ってどんな仕事をするの?
- システム構築で活躍する職種が知りたい
あなたが普段何気なく使っているITサービスを実現しているのがシステム構築業界です。
多くの人が関わり、億単位のプロジェクトになることも多い仕事ですが、表には表れてこない仕事なので、IT業界未経験だと想像もしにくいと思います。
私は某大手IT企業に長年勤めてきた中で、小規模~大規模まで多くのシステム構築案件に携わってきました。
その経験を踏まえて、システム構築の仕事内容について紹介します。
この記事を読むことで、システム構築とはどういうフェーズがあって、どんな業務を行っているのか、どんな職種の人が活躍しているのかを知ることができます。
業界の内情を知ることで、あなたの職業選択の幅が広がり、また実際に転職した後のミスマッチも防げると思います。
システム構築業界とは
![システム構築業界](https://it-tenshoku-guide.com/wp-content/uploads/system_construction-1024x576.png)
システム構築業界では、企業のシステムを企画、要件定義、設計、開発、運用、保守と一貫して請負います。
物流システム、POSシステムなどなどあらゆる業界の企業のあらゆるシステムが対象となります。
システムインテグレーター(SIer)企業やベンダー企業がクライアントから受注し、下請け企業に発注したりしつつ構築業務を行います。
システムインテグレーター:企業や行政のITシステムの構築、運用などの業務を一括して請け負う事業者
ベンダー:コンピュータ、ソフトウェアなどのIT関連製品の販売を行なっている事業者
IT業界の全体像については「未経験者のためのIT業界の全体像」で詳しく紹介しています。
システム構築の仕事内容
システム構築の仕事は、クライアントの要望に即したシステムを実現することです。
世の中にあるさまざまなITサービスは、以下に示す各フェーズを通して作り上げられたITシステムによって実現されています。
![システム構築の流れ](https://it-tenshoku-guide.com/wp-content/uploads/system_construction_flow-795x1024.png)
それぞれ詳しく見ていきます。
企画・提案
クライアント側から解決したい課題をもとにしたシステムの概要を提示されるフェーズです。
クライアントである企業が、社内業務の改善や問題の解決のため、実現したいシステムの概要をまとめ、ITシステムの構築会社に対して依頼を出します。
システム導入の目的やスケジュール、予算などをまとめたものが RFP(提案依頼書) というドキュメントによって提示されます。
主に営業職が依頼を受け、実現可能性、受注可能性について協議します。
主な担当職種:営業
主な成果物:RFP(提案依頼書)(クライアント作成)
要件定義
クライアントの課題解決のために、どのようなシステムにするのかを決めるフェーズです。
クライアントからの依頼を元に、要求された課題を解決するためのITシステムに必要な要素や機能をすり合わせます。
主に以下の工程からなります。
要求分析
クライアントの要求をヒアリングし、課題の内容を詳細に分析し、解決方法を検討します。
主に営業やセールスエンジニアが担当し、スキルマッチする社内外の開発チームへのアサイン等の打診を行ないます。
主な担当職種:営業、セールスエンジニア
要件定義
クライアントの課題を解決するために構築するシステムの機能や性能・規模などのスペックを決めます。
主にプロジェクトマネージャー(PM)やシステムエンジニア(SE)が主体となって、 課題解決を実現できるITシステムの構成要素を検討し、クライアントと認識を共有します。
主な担当職種:プロジェクトマネージャー(PM)、システムエンジニア(SE)
主な成果物:要件定義書
設計
要件定義の内容を基にシステムに落とし込むための設計を行うフェーズです。
主にプロジェクトマネージャー(PM)やシステムエンジニア(SE)が主体となって、要求されたシステムを実現するための仕様を設計書に明文化していきます。
主に以下の工程からなります。
基本設計(外部設計)
要件定義書を基にシステムの構成や機能を設計します。
業務フローやシステム構成、アプリケーション機能など、システムの外部構造についての設計を行います。
主な担当職種:システムエンジニア(SE)
主な成果物:基本設計書
詳細設計(内部設計)
基本設計で定義された要素を開発するために必要な項目を設計します。
システムの内部処理やプログラムの流れなどのシステムの内部構造についての設計を行います。
主な担当職種:システムエンジニア(SE)
主な成果物:詳細設計書
開発・テスト
設計に基づき、必要なシステム開発、アプリケーション開発を行なっていくフェーズです。
主にシステムエンジニア(SE)やプログラマーが主体となって、開発環境を整え、実際にシステムを開発していきます。
主に以下の工程からなります。
環境構築
実現する業務内容に即したシステムの設定、必要なアプリケーションの導入・設定などを行なうための環境を整えます。
プロジェクトの規模に応じて以下の環境を準備します。
- 開発環境構築:開発を行うための環境
- 検証環境構築:開発環境で作られた機能を検証するための環境
- ステージング環境構築:本番動作の確認を行うための本番環境に近い環境
主な担当職種:システムエンジニア(SE)
主な成果物:導入、設定手順書・パラメータシート
アプリケーション開発・実装
開発環境を用いて、実際にコーディングを行い、アプリケーション機能を開発・実装します。
主な担当職種:プログラマー
テスト
開発したアプリケーションのテストを行ないます。
この段階での主なテストは以下の通りです。
- 単体テスト:開発したプログラム単体での動作テストを行う。
- 結合テスト:単体テストが完了したプログラム同士を繋げ、一連の動作のテストを行う。
主な担当職種:プログラマー
主な成果物:単体テスト仕様書・結果報告書、結合テスト仕様書・結果報告書
実装・総合テスト
実際に導入するシステムの構築・実装を行うフェーズです。
主にシステムエンジニア(SE)やインフラエンジニアが主体となって、クライアントに納品するシステムを構築していきます。
主に以下の工程からなります。
インフラ構築
インフラ設計に基づいた機材の設置や配線、電源管理などを行ないます。
サーバーやネットワークなど、ITシステムの基盤となる部分を構築します。
主に以下の範囲の構築を行ないます。
- ハードウェア:サーバーやストレージ、ネットワークの構築などハードウェアの構築を行う
- ソフトウェア:OSやミドルウェアのインストール、初期設定などソフトウェアの構築を行う
主な担当職種:インフラエンジニア
主な成果物:インフラ設計書
本番システム構築
開発フェーズで用意した設定手順書などを用いて、実際の本番システムの設定、アプリケーションの導入・設定を行います。
主な担当職種:システムエンジニア(SE)
テスト
構築した本番システムを用いて、システム全体を通した最終的なテストを行ないます。
主なテストは以下の通りです。
- 総合テスト:構築したシステム全体での動作テストを行う
- 運用テスト(受け入れテスト):クライアント側が行うテスト。業務運用上の動作テストを行う
主な担当職種:システムエンジニア(SE)
主な成果物:総合テスト仕様書・結果報告書、運用テスト仕様書・結果報告書(クライアント)
導入(本番移行)
構築したシステム上にクライアントの業務システムを移し、本番稼動させるフェーズです。
システム構築のメイン業務における最終段階です。
主に以下の工程からなります。
移行リハーサル
本番に近い環境で、本番移行の事前リハーサルを実施します。
主な担当職種:プロジェクトマネージャー(PM)、システムエンジニア(SE)
主な成果物:移行手順書
本番移行(システム切替)・業務移行
構築したシステムの本稼働を行う。データ移行、業務移行を行い、本番環境に切り替えて運用を開始します。
主な担当職種:プロジェクトマネージャー(PM)、システムエンジニア(SE)
運用保守
納入したシステムのアフターフォローを行なうフェーズです。
主にオペレーションエンジニアやサポートエンジニアが主体となって、納品したシステムの正常な稼動をサポートします。
運用監視
システムが停止しないように監視をしたり、クライアントからの問い合わせへの対応をします。
主な担当職種:オペレーションエンジニア
主な成果物:運用手順書
保守
システムの不具合への対応や、パッチの提供・導入などを行います。
主な担当職種:サポートエンジニア
それぞれの工程を担当するIT職種については下記の記事で紹介しています。
IT業界未経験者のためのIT業界の職種|一覧紹介
システムエンジニア(SE)の仕事内容とは
プロジェクトマネージャ(PM)の仕事内容とは
システム構築業界の代表的な企業
![IT業界の代表的な企業](https://it-tenshoku-guide.com/wp-content/uploads/IT_company-1024x576.png)
システム構築業界における代表的な企業についてその一部を紹介します。
ただし、ここで紹介する企業はどれも一次請けを行なう大手企業になります。
実際には下請けとして多くの中小企業が関わってプロジェクトを遂行しています。
SIer
NTTデータ
データ通信やシステム構築事業を行っている日本のシステムインテグレーター
日本IBM
コンピュータ関連製品およびサービスを提供するIBMの日本法人
情報システムに関わるサービス、ソフトウェア、ハードウェア、ファイナンシングの提供を行なう
SIer兼ベンダー
富士通
日本の総合エレクトロニクスメーカーであり、総合ITベンダー
NEC
日本の電機メーカーであり、総合ITベンダー
ベンダー
日本オラクル株式会社
民間法人や公的機関を対象とするビジネス用途に特化したソフトウェア会社であるOracleの日本法人
SAPジャパン
ビジネス向けソフトウェアの開発を手掛ける大手ソフトウェア企業であるSAPの日本法人
コンサルティング企業
アクセンチュア株式会社
総合コンサルティング会社アクセンチュアの日本法人
アビームコンサルティング
日本を代表するコンサルティング会社
IT業界の代表的な企業については「IT業界未経験者のための代表的なIT企業」で紹介しています。
まとめ
IT業界の業種の中の一つである、システム構築業界の業務内容について紹介しました。
世の中にあるさまざまなITサービスは、色々な職種の人が関係し、多くの工程を経て実現されているのが理解できたかと思います。
社内外の多くの人とコミュニケーションを取り、注意を払いながら作業をしなくてはならない場面も多いいですが、とてもやりがいのある業種だと思います。
そんなIT業界への転職を成功させるための方法については「IT業界未経験者がIT業界への転職を成功させる方法!」で紹介しています。